心理検査を受けることは、受検された方がご自身の心の状態や特性をより深く理解するため
の大切な機会です。
初めて経験される方はもちろん、何度か経験されたことがある方も、検査に対して少なからず不安や緊張を感じることがあるかもしれません。
心理検査に向き合う際、受検者がどのような心理状態になりやすいのかを知っておくことは、心理士にとって非常に重要です。
この記事では、受検者が感じやすい感情と、心理士としてどのような配慮や態度が求められるかを紹介します。
心理士を目指す初学者の方にも、現場で役立つ視点として参考にしていただければ幸いです。
受検者が体験しやすい主な心情
まずは、受検者の方がよく体験しやすい心情について具体的に見ていきましょう。
1.不安・緊張
- 未知への不安:「どんな検査なのか」「何を聞かれるのか」「どんな結果になるのか」など、わからないことに対する不安を抱く方は多く、特に初めての検査では緊張が高まりがちです。
- 評価されることへの不安:検査の結果によって自分の能力や性格、精神状態などが評価されるのではないかという恐れを感じることがあります。
「悪い結果が出たらどうしよう」「変に思われたらどうしよう」といった心配が生じやすいです。 - 失敗への恐れ:知能検査や学力検査など、正答が求められる検査の場合、「うまくできなかったらどうしよう」という失敗への恐れを感じることがあります。
- 詮索されるのではという懸念:「どこまで聞かれるんだろう」と、個人的なことを深く聞かれるのではないかと警戒するケースもあります。

2.期待・関心
- 自己理解への期待:検査を通して自分の特性や能力、課題などを客観的に知りたいという期待感を持つことがあります。
「自分の強みや弱みを知りたい」「どんな性格なのか客観的に知りたい」と、自分を知る手がかりとして期待を抱く方もいます。 - 問題解決への期待:何らかの悩みや問題を抱えている場合、検査結果がその解決の糸口になるのではないかという期待を持つことがあります。
「検査で自分の問題点が分かって、改善につながればいいな」と考えることがあります。 - 客観的な評価への関心:「他人からどう見られているのか」「自分の特性をデータで知りたい」と、外からの視点を求める気持ちが背景にある場合もあります。

3.疑問・警戒心
- 検査の意義への疑問:「なぜこの検査を受ける必要があるのか」「何がわかるのか」といった疑問を抱くことがあります。
- 検査者への警戒心:検査を行う心理士に対して、どのような人なのか、自分のことをどう判断するのかといった警戒心を持つことがあります。
「この人に自分のことを話しても大丈夫だろうか」「偏見を持たれないだろうか」といった不安です。 - 結果の利用への懸念:検査結果がどのように利用されるのか、自分の意図しない形で利用されるのではないかといった懸念を持つことがあります。
「検査結果が不利に扱われたらどうしよう」「秘密は守られるのだろうか」といった心配です。
4.疲労・負担感
- 時間的負担:心理検査は時間がかかることがあり、集中力を持続させる必要があるため、疲労を感じることがあります。
特に長時間にわたる検査や、複数の検査を受ける場合は負担感が大きくなります。 - 精神的負担:質問に答えたり、課題に取り組んだりする中で、精神的なエネルギーを消耗することがあります。特に、過去の辛い経験や感情について問われる場合は、精神的な負担が大きくなります。
5.その他の感情
- 退屈感:一部の検査では、単調な作業が続くことがあり、退屈を感じることがあります。
- 挑戦意欲:知能検査や能力検査など、自分の力を試すような検査に対して、挑戦意欲を持つことがあります。「どこまでできるか試してみたい」「良い結果を出したい」といった気持ちです。
- 安心感:検査を受けることで、「専門家にみてもらえる」「自分の状態が明らかになる」といった安心を感じる方も少なくありません。

心理士として大切にしたいこと
上に示したように、心理検査を受検される方は、色んな心情を抱えながら検査に臨んでくださっています。
心理士は、そのことをよく理解し、以下のような点に配慮して検査に携われたら良いのではないかと思います。
1.丁寧な説明
検査の目的や内容、結果の利用方法などを丁寧に説明し、受検者の不安や疑問を解消するように努めます。
<この検査を受けることで何がわかるのか><結果はどこまで共有されるのか>など、受検者が安心して臨めるよう説明を心がけましょう。
検査導入時に、目的等ご理解いただけたか、<疑問や質問等はないですか?>と確認しておくと良いでしょう。
2.安心できる雰囲気づくり
受検者がリラックスして検査に臨めるような温かく受容的な雰囲気を作るように心がけます。
急に教示を読み始めたりせず、自己紹介や来訪時の天気の話等、アイスブレイクの会話をするのも良いでしょう。
3.受容的な態度
受検者の言動や感情を批判的に捉えることなく、ありのままを受け止める姿勢を示します。
「どんな反応にも意味がある」という前提で向き合いましょう。
4.プライバシーへの配慮
受検者のプライバシーに配慮し、得られた情報は適切に管理することを伝えます。
5.結果のフィードバック
検査後には、結果を分かりやすく説明し、受検者の自己理解を深めるサポートを行います。

まとめ
心理検査は、単にデータを取る作業ではなく、受検者の心に寄り添いながら行う専門的なプロセスです。
受検者の心理状態に配慮し、信頼関係を築きながら検査を進めることで、より正確で意味のある結果が得られます。
心理士初学者の皆さんにとっても、受検者にとっても、安心して検査に向き合える環境づくりは非常に重要です。
この記事が、そんな配慮を重ねる第一歩として、お役に立てれば幸いです。