私たちは心理臨床コミュニティTicekt.を運営する臨床心理士・公認心理師です。
前回の記事では、公認心理師養成大学院に通うM1のAさんが、初めてプレイセラピーを担当する日の公認心理師Cさんとのやりとりについて見てきました。
その後、AさんとCさんはどんなやりとりを展開したのでしょうか。
続きを見てみましょう。
Bさんの視点で思いを馳せる
Cさん
一旦Bさんの視点にたって、思いを馳せてみましょうか。
う~ん。自分がBさんだったら、とても緊張してくると思う。担当の人が、どんな人なんだろう、学校の先生みたいに怖い人だったら嫌だな、とか考えたりするかもしれない。
Cさん
うんうん。そうかもしれないですね。
Aさん
優しい人だったらいいな、男の人かな女の人かな、お母さんと離れないといけないのかな、とか考えるかもしれない
Cさん
そうですね。きっと思うことは一つだけじゃないし、色んな思いを抱えながら、来てくれるんだと思います。そんなBさんがここにたどり着いて、出迎えてくれた人の印象を左右するのは何でしょう
Aさん
見た目、表情。服装…
Cさん
見聞きした色んな情報からこの人は大丈夫そうな人か、判断しますよね
Aさん
そう考えると、僕(私)の今日の格好は、10歳のBさんにしてみると、少し堅苦しくて、学校の先生のようで、権威的に見えてしまうこともあるかもしれない…
Cさん
Aさんの学びを体現しようとする姿勢はとても素晴らしいし、今このいくつかのやりとりの中で大事な発見もありましたね。
権威的な先生をきっかけとして不登校となったBさんに、同様の体験をさせずに関係を築こうとする配慮。まだ面接まで時間はあるけど、何か工夫できそうなことはありそうですか?
Aさん
…とりあえずこのジャケットは脱いでみておこうかな…
Cさん
それも良いと思います。ただ、一つ言っておきたいのは、
”プレイセラピー=ジャケットを着ない!”
という方程式だけが正解じゃないよ、ってことです。
Aさん
(困惑)どういうことですか?
Cさん
今日私は最初に、Aさんに”今日そのジャケットを着てきた意図は?”と尋ねましたね
Aさん
はい、間違ったかな、とドキッとしました
Cさん
あの時Aさんはそう習ったからと答えましたね。
でも、もしあの時Aさんが『今日予定のBさんは、権威的な大人への怖さがある方みたいなので、こんな風にジャケットを着て一見権威的そうな人でも大丈夫な大人もいるよ、というのを示せたらいいなと思ったので、この格好で来てみました』なんて答えたら、なるほど~と思ったかもしれません。
Aさん
…!!!そんな捉え方もあるのか!!!
Cさん
要は、そのケースをどのように見立てて、どのような人として出会おうとしているか、自分で言葉にして説明できる、ということが大事だと私は思っています
Aさん
心理士さんはそんなところまで考えてクライエントさんに会われているのか…!!
とても勉強になりました。なんか、あんまりよく考えずに「習ったから」という一点だけでこの服装を着て来たことがちょっと恥ずかしいです。
服装選び一つをとっても、すべてがクライエントさんに還元されるし展開に影響する、ってことですよね。がんばります。
服装についての方程式の解は結局…?
以上のAさんとCさんのやりとりを見て、みなさんどんなことを感じられたでしょうか。
2人のやりとりを見て、読み始めた時より混乱が増した方もおられるかもしれません。
次回はこの2人のやりとりを受けて、結局何が大切なの??ということについてまとめたいと思います。