体験記

職務経歴書って、どう書けばいいの? —書く側と読む側、両方を経験してわかったことー

「職務経歴書って、どう書いたらいいんだろう?」

若手の頃の私は、職務経歴書と聞くたびにそう思っていました。
履歴書のような定型があるわけでもなく、ネットで調べても出てくるのは民間企業向けのテンプレばかり。
「心理職バージョン」は、どこかで学べる機会はほとんどないんですよね。

先輩に「職務経歴書、どんなふうに書いてますか?」と聞くのも、ちょっと勇気がいるし、SVで相談するのも遠慮してしまう。
結局、自分なりにあれこれ悩みながら、なんとなく書いて出していました。

でも今は、書く側から読む側に回ることも少しずつ増えてきて、見えてきたことがあります。


職務経歴書って、実はとても面白い

そこには、その人の臨床の価値観やスタンスが、言葉の端々にあらわれている気がするから。
そして、書くプロセス自体が「自分の臨床を言葉にする練習」にもなると感じています。

この記事では、「教えます!」ではなく、あくまで私自身が書いてきた感覚と、読み手になった今の視点から感じていることを、ゆるやかに綴ってみたいと思います。


書く側だった頃の私

当時の私は、「とりあえず書かなきゃ」と思っていました。
これまで担当してきたケースの対象や件数、参加した研修、所属機関での役割など──思いつくかぎりを一生懸命並べて、「これでちゃんと伝わるだろうか」と、何度も読み返していた記憶があります。

でも、書けば書くほど「本当に伝えたいこと」がぼやけていくような気がして、なんとなく納得がいかないまま出すことも多かったです。
ケース記録とはまた違って、自分の仕事を一歩引いたところから、簡潔に言語化することのむずかしさを痛感しました。


読む側になって見えてきたこと

最近は、新規職員の採用などで他の方の職務経歴書を読む立場になることも増えてきました。
その中で気づいたのは、次のようなことです。

たとえば、わかりやすい文章やていねいな言葉づかいは、今や“できていて当たり前”になってきているということ。
特に最近は、AIを活用して職務経歴書を整える人も増えてきていて、文法的なミスや読みづらさが少ないこと自体は、もはや特別なことではなくなりつつあります。

むしろ印象に残るのは、「情報の取捨選択」や「言葉の濃度」です。
たくさんの情報を整えて“きれいに”書くのではなく、「何をあえて書かないか」「どんな言葉を選ぶか」に、その人らしさや視点がにじみ出るように感じます。


読み手としてありがたいのは、具体的な数字や対象の記載

「週に○件のカウンセリング」「○歳〜○歳の発達障害のある子どもたちと関わっていた」など、規模感や内容のイメージが具体的に湧きやすくなります。

医療機関であれば、関わったことのある主な疾患名(うつ病や適応障害など)があると、その人の臨床の幅がより伝わりやすくなります。
また、心理検査を実施している方であれば、「実施可能な検査名」や「経験件数(例:WISC-V 50件程度)」なども添えてあると、読んでいてとても参考になります。


つい説明したくなるけれど

たとえば「相談員」や「支援員」といった肩書きだけでは、仕事内容が伝わりにくいケースもありますよね。
そのとき、つい「こんな仕事でした!」「こういうこともしてました」「ああいう場面にも対応していました」と、一生懸命に説明を書きたくなる気持ち──私もとてもわかります。

でも、読む側からすると、全部を細かく知りたいわけではなくて、
「どんな対象に、どんなスタンスで関わっていたか」や、
「その仕事をどう捉えていたのか」の方が、むしろ印象に残るのだと感じます。

だからこそ、「説明しすぎず、でもぼかさない」ちょうどいいバランスが大事なのかもしれません。

職務経歴書で全部を語りきろうとしなくても大丈夫。
説明が必要なところは、面接でちゃんと聞いてもらえるはずです。
だからこそ、「伝えすぎる」より「伝わるヒント」を残しておくような書き方が、今の私にはちょうどいい気がしています。


だから次に書くなら、私はこうする

今はもう職務経歴書を書く機会は少なくなりましたが、もし次に書くことがあれば、
「上手く書こう」とするよりも、「伝わるように書こう」と意識したいと思います。
それは、読み手のことを想像するということでもあります。

たとえば、

  • 「この人が読むとして、どこまで詳しく書いたら伝わるかな?」

  • 「どんな経験がその職場で活かせそうに見えるだろう?」

そんなふうに、ほんの少し視点をずらしてみるだけで、文章の表情が変わる気がしています。

もし書く機会があれば、応募する職場のホームページや募集要項をざっと見て、
「どういう人を求めていそうか」をなんとなく想像することから始めると思います。

1人職場で即戦力を求めているのか、
入職後に丁寧な研修があるのか、
それともチームの中で役割を担っていくポジションなのか──

そこに思いを寄せてみると、自然と書く言葉も変わってくるはずです。

全部を盛り込むのではなく、
自分の仕事のなかで「こういうことを大事にしてきた」と思えることを、言葉にする。
その過程自体が、自分の臨床をふりかえる時間にもなるのだろうと思います。


まとめ:職務経歴書は、自分の臨床を整理する道具

職務経歴書って、ただの“提出書類”じゃなくて、
「自分の臨床を棚卸しするツール」でもある気がしています。

私自身、若手の頃はとにかく不安でしたし、今でも正解があるとは思っていません。
でも、「自分の言葉で自分の仕事を表す」というプロセスを、大切にしてみるだけでも、少し安心感が増すように思います。

書きながら、
「ああ、自分はこういう仕事を大事にしてたんだな」と再確認できる。

そんな時間にもなるとしたら、職務経歴書を書く意味は、少し広がるのかもしれません。

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