「自己紹介、お願いします」
たった一言なのに、なんでこんなに重たく感じるんだろう。
心理士として現場に出たばかりの頃、私はいわゆる“ひとり心理士”でした。どこの会議に行っても、自己紹介を求められるのが当たり前。
でもその「自己紹介」は、一言二言じゃ済まないんですよね。「心理士さんって何をする人?」から始まって、ほぼスピーチ。毎回、緊張と悩みの連続でした。
この記事では「自己紹介、お願いします」——そんな一言に戸惑った私が、自己紹介の悩みや工夫を振り返ります。
初日のスピーチラッシュや、自己紹介の“持ち札”を持つ大切さ、場面に合わせた言葉選びのポイントなど、実体験をもとに紹介。
ひとり職場や経験が浅い方にも、少しでも役立つヒントを届けられたら嬉しいです。
勤務初日、いきなりスピーチラッシュ
スクールカウンセラーとしての初日。私はこんなに多くのあいさつや自己紹介があるとは想像していませんでした。
それぞれ相手によって話す内容やテンションを変える必要があって、頭も気もつかいっぱなしの一日だったのをよく覚えています。
初日は本当に焦りましたが、勤務のたびに自己紹介を求められることが多いとわかってからは、あらかじめ心の準備や自己紹介の内容を用意しておくようにしました。
そのおかげで、急に話を振られても対応しやすくなりました。
自己紹介の“持ち札”をいくつか用意しておこう
私は、自分の中にいくつかの「自己紹介パターン」を持っておくようにしています。
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10秒で終わる超簡潔バージョン
たとえば「○○学校でスクールカウンセラーをしています、○○です。よろしくお願いします」くらいの、ごく簡単なあいさつ。サラッと済ませたい場面で使っています。 -
1分ほどで話せるベーシックな紹介
会議などでは、「週に○回勤務していて、子どもたちや保護者の方の相談を受けています」といった基本情報に、「連携しながら進めていけたら嬉しいです」といったスタンスも添えるようにしています。 -
もう少し丁寧なバージョン
保護者会や研修の冒頭などでは、「お話をもとに、一緒に理解を深めたり、今できることを考えていけたらと思っています」といった表現を使うこともありました。
また、「相談を通して、お子さんのことや日々の気がかりを一緒に捉え直していけたらと思います」と伝えることもあります。
難しい言葉は避けつつも、こちらの姿勢や専門性が自然と伝わるように、自分なりの言葉を選ぶようにしています。
どの場面でも、その都度ゼロから考えると焦ってしまうので、「いつものあれ」を自分の中にいくつか用意しておくと、ずいぶん気がラクになります。
ただ、持ち札を用意するのは、自分が安心して話せるための“土台作り”に過ぎません。
実際には場面や相手によって感じることや伝えたいことが違うので、その都度、自分らしい言葉で伝えるようにしています。
“〇〇”というキーワードに助けられた
職員向けのあいさつでは、「連携」という言葉を軸に話すようにしていました。専門用語は避けつつ、心理士としてのスタンスを伝える——その「ちょうどいい距離感」を探るのに、何度も練習したものです。
「硬すぎず、でも頼りなくもなく」。
それは、今でも私が大切にしている自己紹介のスタンスです。
保護者会での自己紹介、こんな言い方も
保護者会での自己紹介では、「連携」を意識してこんな言い方もよく使われています:
「保護者は子どもの専門家、先生は教育の専門家、カウンセラーは心の専門家。それぞれの専門性を活かして、一緒に考えていきましょう。」
私もこういったフレーズを参考にしながら、場面ごとに言葉を選ぶようにしています。
自己紹介は、小さな“専門性のプレゼン”
今回は、スクールカウンセラーとして働きはじめた頃の体験をもとに書いてみました。
あの頃の私にとって、自己紹介はただのあいさつではなく、「自分が何者で、どんなスタンスで関わるのか」を伝える、小さな専門性のプレゼンのようなものでした。
それに気づいてからは、なるべく短く、でも伝わりやすいフレーズを考えるようになりました。
そして、自己紹介やスピーチの場面は、初日だけでは終わりません。会議、研修、はじめての打ち合わせ……「一言お願いします」の機会は思ったより多いものです。
「心理士の〇〇です。よろしくお願いします」だけで終わらせず、少しでも自分の専門性や関わり方を伝えられるように。そんな工夫を、今も続けています。
最初は緊張したり戸惑ったりするかもしれませんが、自己紹介の場は自分を知ってもらい、信頼関係の一歩をつくる大切な時間でもあります。
私も最初は慣れずに苦労しましたが、少しずつ自分らしい伝え方が見つかりつつあります。
心理士1年目の方や、ひとり職場で頑張っている方に、この記事の内容が少しでも届けば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。