心理学の卒業論文や修士論文を進める上で、多くの人が最初の壁に直面するのが「文献探し」ではないでしょうか。
テーマは決まったけれど、「どうやって論文を見つければいいのか」「どこから探せばいいのか」と、最初の一歩でつまずく方も少なくありません。
この記事では、心理系の卒論・修論執筆に役立つ文献検索方法と、その管理のコツを整理してご紹介します。
まずは「Google Scholar」で広く探す
最初の入り口として便利なのが Google Scholar(グーグルスカラー) です。
通常のGoogle検索と同じ感覚でキーワードを入力するだけで、ジャーナル論文、学術誌、書籍、プレプリントなど、幅広い種類の文献を横断的に検索できます。
例えば「認知行動療法 うつ」「不登校 保護者支援」など、自分のテーマに関連するワードを組み合わせて検索すると、多くの論文にアクセスできます。
特に英語論文も含めて幅広く拾えるのがメリットです。
Google Scholarの便利な点は、「被引用数」(どのくらい引用されているか)や「引用」(その論文が何を引用しているか)が追跡できる点です。
これにより、特定の研究テーマに関連する重要な論文を芋づる式に見つけることができ、研究の全体像を把握するのに役立ちます。
ただし、全文が無料で読めるとは限らず、大学図書館の契約サービス経由で閲覧する必要がある場合もあります。その点は注意が必要です。
日本語論文なら「CiNii Research」
日本語で書かれた論文を中心に探したいときは、CiNii Research が役立ちます。
国立情報学研究所が提供しているデータベースで、国内の学会誌や紀要、博士論文などが検索対象になっています。
CiNii Researchでは、著者名、論文タイトル、キーワードだけでなく、発行年や掲載誌名でも絞り込みが可能です。
これにより、探している文献をより正確に見つけることができます。
また、多くの論文がPDF形式で無料公開されているため、すぐに本文を閲覧できる点も大きなメリットです。
心理系の卒論では、日本国内の研究や文化的背景を踏まえた論文を引用することも多いため、CiNiiは必ずチェックしておきたいところです。
医療系なら「PubMed」と「メディカルオンライン」
心理学の中でも医療系の臨床に関連するテーマを扱う場合は、より専門的なデータベースがの利用が有効です。
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PubMed(パブメド)
米国国立医学図書館が運営する生物医学分野の論文に特化した世界的なデータベースです。英語の文献が中心ですが、心理臨床や精神医学に関する情報も豊富で、最新の研究動向を把握するのに役立ちます。 -
メディカルオンライン
国内の医学関連の学会誌や雑誌を幅広く収録しています。特に臨床例や疾患に関する論文を探すときに便利です。疾患に関する知見や、実際の臨床現場での取り組みを知りたい場合に非常に役立ちます。
これらのデータベースは、Google ScholarやCiNii Researchでは見つけにくい、専門性の高い文献を発掘するのに役立ちます。
医療系テーマを扱う卒論・修論では、この2つを組み合わせて検索すると安心です。
レアな論文は「IRDB」で探す
「症例報告」「臨床実践の小規模研究」など、検索ではなかなかヒットしない資料を探すときは、IRDB(学術機関リポジトリデータベース) を活用するとよいでしょう。
全国の大学や研究機関が公開している論文や紀要がまとめられているため、CiNiiに出てこない資料を見つけられることがあります。
大学院の修士論文や、特定の研究室で発表された紀要論文など、通常の検索エンジンでは見つけにくいニッチな文献を探す際に真価を発揮します。
あなたの研究テーマと似た事例報告や先行研究を見つけることで、研究の方向性を固めるヒントが得られるかもしれません。
(補足)
研究に直接関係なくとも、紀要であれば相談室臨床の事例報告が多数あります。
学内実習でうまくいかない時、こうした紀要論文が参考になることがあります。
実践例を参考にしたいと思ったときは、IRDBの活用が非常にお勧めです。
文献の連鎖をたどり、論文を管理する
論文を効率的に集めるための最も重要なコツは、文献の連鎖をたどることです。
論文を読んでいて「これは役立ちそう」と思ったら、その論文の巻末にある 文献リスト も必ずチェックしてみましょう。
すでに関連研究を整理してくれているので、自分の研究領域を広げるきっかけになります。
気になるタイトルを見つけたら、その論文を新たに取り寄せて読んでみることで、芋づる式にその研究分野の重要な文献を網羅できます。
こうした積み重ねによって、その分野の研究史やトレンドを把握できるようになります。
文献管理は「エクセル」でシンプルに
せっかく集めた論文も、管理がバラバラだと後で引用するときに困ってしまいます。
市販の文献管理ソフトを使う方法もありますが、卒論や修論レベルであれば エクセル にまとめておくだけでも十分です。
例えば以下のように、論文の情報を表形式で保存しておくと便利です。
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著者名
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発行年
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論文タイトル
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掲載雑誌名
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巻号・ページ
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備考(引用したい文言、どの部分を使うか等)
さらに、卒論・修論の文献一覧にそのまま貼り付けられる形で以下の形式でも記録しておくのがおすすめです。
(例)著者名(発行年).論文タイトル.掲載雑誌名,巻(号),掲載ページ.
こうしておけば、卒論・修論の文末に参考文献リストを掲載するときに、コピペするだけで済み、大幅に作業効率が上がります。
まとめ
心理系の卒論・修論では、どれだけ質の高い文献を集められるかが研究の土台になります。
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広く探すなら Google Scholar
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日本語論文は CiNii Research
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医療・臨床系は PubMed と メディカルオンライン
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レアな論文は IRDB
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文献リストを参照してさらに深掘り
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管理は エクセルで一元化
この流れを押さえておけば、必要な文献を効率的に集められるはずです。
最初は大変に感じるかもしれませんが、慣れてくると「このテーマならこのデータベースから」と自然に手が動くようになります。
卒論や修論は、科学者-実践家モデルに基づく学びの第一歩です。
今回ご紹介した検索方法を一度試してみてください。
自分のテーマに合う文献がどれくらい見つかるかチェックしてみましょう。
この文献検索を通して、自分の研究テーマに対する理解を深められたら幸いです。