1. はじめに
心理士を目指す方や、現場に出たばかりの若手心理士にとって、
「初めて担当として受け持つケース(いわゆるイニシャルケース)」は、とても緊張するものです。
うまく話せるだろうか。何か聞かれて答えられなかったらどうしよう。
相手の気持ちを受け止めきれるだろうか……そんなふうに、不安を感じるのは決して珍しいことではありません。
緊張や不安を感じるのは、心理士として真剣にクライエントに向き合う証です。
誰もが初めてのケースでは緊張しますが、同時にしっかり準備を重ね、スーパービジョンや研修、同期との対話を通して経験を積みながら、安心してカウンセリングが提供できるよう努力しています。
だから、もしあなたが緊張を感じていても、それは決して不安に思う必要はありません。
この記事では、そんな緊張や不安とどう付き合い、心理士として自分らしくケースに向かっていくためのヒントをお伝えします。
2. 緊張したとき、体はどう反応する?
不安や緊張を感じると、体にはさまざまな反応があらわれます。
例えば
-
手が震える
-
手汗をかく
-
声が震える
こうした反応は、自分の意志とは関係なく自然に起こるものです。
そしてそれらは、カウンセリングの場面にも影響を与えることがあります。
3. 緊張がカウンセリングに与える影響
たとえば、手が震えることで記録がうまく取れなかったり、声が震えることでクライエントに不安を与えてしまうこともあるかもしれません。
こうしたことを「ダメなこと」として捉える必要はありません。
むしろ、「自分は緊張するとこんな反応が出るんだ」と知っておくことが大切です。
あらかじめ自分の傾向を知っていれば、どうしたらうまく対応できるかを考えたり、準備をしておくこともできます。
そうした工夫が、実際の場面での安心感にもつながっていきます。
4. 自分の反応を知っておくことの大切さ
緊張する理由はさまざまです。初めて担当するケースだからという理由もあれば、特定の話題や状況に対して反応が強く出る場合もあります。
もちろん、カウンセリングの中でどんな話題が出てくるかはそのときにならないとわからないことが多いですが、
カンファレンスや事例検討、文献を読む中で、自分がどんなテーマにざわざわしたり、引っかかりを感じるかを意識してみるのはとても良い練習になります。
ネガティブに感じやすいのか、個人的な記憶や感情が刺激されやすいのか──
そんな「自分の反応」を知っておくことは、大事な準備のひとつです。
5. 自分の反応は、あなたの足跡──“らしさ”として受け止める
人によって感じ方や反応はさまざまです。
それは、これまで歩んできた人生や経験が反映された、あなたらしさのひとつでもあります。
「こう感じる自分はダメだ」と否定するのではなく、
「そう感じる自分がいる」ということを把握し、そのうえでどう対応するかを考えていくことが大切です。
6. 不安や緊張とどう付き合うか
不安や緊張をゼロにするのは難しいかもしれませんが、少しでも和らげるために、こんな工夫が役立つかもしれません。
-
「緊張するのは自然なこと」と認める
-
呼吸法など、自分に合ったセルフケアを取り入れる
-
ケース後に振り返りの時間を持ち、自分の感覚を整理する
-
スーパービジョン(SV)で話題に取り上げ、ケース理解に加えて自己理解を深める
-
同期や仲間と体験をシェアして安心感を得る
緊張したときに落ち着くためのセルフケア
不安や緊張を感じたとき、どうやって自分の体や心を落ち着かせるかも知っておくと安心です。
例えば…
-
呼吸法を行う
-
肩や首の力を意識的に抜く
-
ゆっくり話すことを意識する
-
今の体の感覚に集中して“今ここ”に戻る(マインドフルネス)
-
軽くストレッチをしたり、手を動かして緊張をほぐす
など、自分に合った方法が見つかると良いですね。
ロールプレイで感覚を確かめる
同僚や仲間とロールプレイをすると、自分の話し方や態度、緊張がどう映っているかフィードバックをもらえます。
「ここは落ち着いていて安心できたよ」や「このとき少し声が震えてたね」など、客観的な視点を得ることで自分の反応を理解しやすくなります。
また、緊張している自分を受け入れてもらえる経験が、心の安心感にもつながります。
練習の場だからこそ、失敗を恐れず挑戦できるのもメリットです。
7. おわりに
ケースを担当するときに不安や緊張を感じるのは、あなたが真剣に向き合っている証です。
それは決して特別なことでも、恥ずかしいことでもありません。
自分の体や心の反応を知り、それを受け止めたうえでどう関わるかを考えていくこと──
それが、心理士としての確かな一歩につながっていきます。
あなたのペースで、少しずつ進んでいけますように。
心から応援しています。