私たちは心理臨床コミュニティTicekt.を運営する臨床心理士・公認心理師です。
大学院に進学して初めて担当することになったイニシャルケース、あるいは入職して最初に任されたカウンセリング。
そんなとき、いちばん最初にするのは、クライエントを面接室へご案内することかもしれません。
でも、
「あれ、どっちが先に歩くんだっけ?」
「ノックは必要?」
そんなふうに迷ってしまった経験はありませんか?
心理士は、一般的なビジネスマナーの研修を受ける機会が少ないこともあり、ちょっとした場面で戸惑うこともあると思います。
特に初めての対応では、「これで合っているかな」と不安に感じることも多いものです。ですが、こうした基本的なマナーを知っておくことで、自分の心にも少し余裕が生まれ、クライエントにとっても安心できる空間を作りやすくなります。
この記事では、クライエントを面接室へご案内する際の基本的な流れや注意点について、一般的なビジネスマナーの考え方も踏まえながら、やさしく解説していきます。これから臨床の現場に出る方にとっての「最初の一歩」の参考になれば幸いです。
面接室へのご案内の基本的な流れ
ここでは、医療機関や相談室での臨床を想定して、クライエントをご案内する際の流れを5つのステップに分けてご紹介します。
① お名前の確認と自己紹介、行き先の案内
まずはクライエントのお名前を確認し、簡単に自己紹介をします。
緊張する場面ですが、ゆっくり丁寧に伝えることで、安心感を持ってもらえると良いですね。表情や声のトーンにも意識を向け、できるだけ落ち着いた態度を心がけましょう。
緊張しているクライエントさんも少しほっとしてくれる感じがします。
② 先導する
ご案内の際は、歩調を合わせながらクライエントの2〜3歩前を歩くと良いかと思います。
歩くスピードは相手に合わせ、急ぎすぎず、間を取りすぎず。柔軟に対応しましょう。

③ 入室する
面接室のドアが閉まっている場合は、ノックして空室かどうかを確認しましょう。
中が空いていれば、ドアを開けます。
ドアを開けて軽く手で促すと、案内がスムーズになると感じています。
ドアを閉めるタイミングにも気を配り、クライエントが入室してから静かに閉めると良いでしょう。
④ 席をすすめる
部屋に入っても、どこに座ればいいか迷ってしまうクライエントもいます。
決まっている場合は、やさしく声をかけて案内しましょう。
座る位置が決まっていない場合は、「お好きな席におかけください」とお伝えするのも良いでしょう。
⑤ 自分も着席する
クライエントが着席したのを確認してから、自分も自然なタイミングで席につきましょう。
焦らず、クライエントの落ち着きを見てから座ることで、安心感を与えることができます。
また、荷物の置き場やコートの扱いなど、ちょっとした気配りができると、さらに良いかと思います。
カウンセリング終了後のご案内
カウンセリングが終わった後も、丁寧な対応が求められます。
① ドアを開ける
クライエントの退室の準備が整ったら、ドアを開け、「こちらです」と軽く声をかけます。
クライエントが出やすいよう、通路の状況や他の方の動線にも配慮しましょう。
② 待合室までご案内する

帰り道も、2〜3歩前を歩きながら、クライエントの歩調に合わせてご案内します。
待合に到着したら
などの声かけを添えると、次の流れがわかりやすくなります。
退室後の配慮も、さりげない心配りを忘れずに。
おわりに
ご案内ひとつをとっても、心理士としての姿勢や、クライエントへの気配りが自然と伝わります。
ただし、現場ではこの通りにいかないことも多々あります。
たとえば、面接室へご案内中に「お手洗いに行ってもよいですか?」と希望される場合や、予約していたはずの面接室が別のカウンセリングで使われていたこともあります。
また、面接室に入る前からクライエントが話し始めてしまったり、面接中に他のクライエントやスタッフが入ってきてしまうといったケースもあります。
こうした個々の理由や背景はさまざまで、対応もケースバイケースになりますが、基本のマナーや流れを押さえておくことで、柔軟に対応しやすくなります。
私自身、現場で戸惑うことも多いですが、そんな時こそ慌てず、「今できる最善」を考えるように心がけています。
少しずつ経験を積み重ねるうちに、自分なりのペースや対応のコツも見えてくるので、焦らず一歩ずつ進んでいきましょう。
この記事が、あなたの「最初の一歩」を支える小さなヒントになれば嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。