学生時代って、いつも手探りで、正解もゴールもよくわからないまま、目の前のことに向き合っていく日々だったなと思います。
今振り返れば、「もっとこうしておけばよかったな」と思うこともありますが、当時の自分なりに、そのときできる最大限のことをやっていたとも感じています。
この記事では、臨床心理士として働き始めてから気づいた「学生のうちにやっておけばよかったこと5つ」を、自分の実体験をもとにまとめました。
あの頃の自分を責めるためではなく、これから心理職を目指す方が少しでも安心して準備できるよう、そんな願いを込めて書いています。
幅広い心理療法について触れておけばよかった
学生の頃は、自分が関心を持った心理療法を中心に学び、研修やワークショップもその分野ばかり参加していました。もちろん、その集中は無駄ではなかったのですが、今振り返ると「関心を持った分野だけに限定しすぎていたな」とも感じます。
実際に現場出会うケースは多種多様です。あるケースでは認知行動療法が有効でも、別のケースでは家族療法や芸術療法が必要になることもあります。
学生のうちに、興味のある心理療法だけでなく幅広い分野のワークショップや研修に参加していれば、「その療法を選択肢として持てる」土台ができていたと思います。その時にすべてを理解しきれなくても、心の片隅にとめておくことで、該当するケースに出会ったときに「そういえばあのワークショップで聞いたな」と思い出し、資料や本を読み返すきっかけになったでしょう。
特に初学者向けのワークショップや講演会には、学生のうちにもっと足を運んでおけばよかったと思います。深く学び込む段階でなくても、「その場の空気」「ファシリテーターの進め方」「体験者としての感覚」を知っておくことで、将来その療法を学び直すときのハードルはぐっと下がったと思います。
合宿型ワークショップなど体験的な学びに参加すればよかった
学生時代に合宿型の研修に参加した経験があります。お金はかかりましたが、複数日にわたって集中して学べる貴重な機会でした。座学だけでは気づけなかった実際のやり取りの雰囲気に触れることができ、本当に勉強になりました。
もちろん、本を読んで学ぶことも大切ですが、体験型の研修で講師の先生のデモンストレーションや参加者同士のやり取りを見ることは、本当にまったく違い、さらに深い学びになりました。
しかし、臨床現場に出ると、仕事や家庭の事情でなかなか合宿型の研修に参加するタイミングを作るのが難しくなります。研修費用を出してくれる職場もありますが、それでもスケジュール調整は簡単ではありません。
だからこそ、学生のうちにもっと体験的な学びをしておけばよかったと強く感じています。
幅広い心理検査に触れておけばよかった
大学院には、臨床心理士が扱う多くの心理検査がそろっている場合が多いです。現場に出てから学ぶことももちろん可能ですが、「知識として知っている」だけなのと、「実際に触ったことがある」では雲泥の差があります。
学生時代は、授業や実習で必須の検査以外に触れる機会が少なかったのですが、今思えば少しでも手に取って、手順や雰囲気だけでも体験しておけばよかったと感じます。短時間でも、実際のキットを広げてみたり、練習でやってみたりすることで、後の吸収力がまったく違ってきます。現場に出てからは、慌てて猛勉強することになった検査が何個かあり、この点はとても後悔しています。
また、資格試験の勉強の際も、実際に検査に触れておくことは非常に役立ちました。試験問題を見たときに、文字だけで知っているよりも「あのしっかりした箱に入っていた検査だ」といった具体的なイメージがあると理解が深まりました。
お金の勉強をしておけばよかった
臨床心理士の仕事は、専門知識や技術だけでなく、生活や将来のための経済面の準備も大切です。学生時代は、お金の管理や貯蓄、税金、年金、保険、確定申告などの制度についてあまり学ぶ機会がありませんでした。
大学でファイナンシャルプランナー(FP)資格取得の案内があったとき、当時の私は「自分には関係ない」と思い、受けませんでした。しかし、社会人になってからお金の管理や確定申告、税金の仕組みについて知る必要性を痛感し、「あの時FP資格を取っておけばよかったな」と強く感じています。
初めての確定申告のときは、何をどうすればいいのか全くわからず、とても焦りました。書類の準備や手続きの流れ、控除のことなど、不安がたくさんありました。こうした経験から、学生のうちに確定申告や税金の基礎知識を少しでも学んでおけば、社会人になって慌てることが減っただろうなと感じています。
働き始めると、家計管理や節税、確定申告の仕組みを知っておくことの大切さを実感します。特に、勤務形態が多様な臨床心理士は、経済的な自己管理が重要になってきます。
資格更新のための費用や研修費、スーパービジョン(SV)代などもかかりますが、これらは長いキャリアの中で少しずつ慣れていける部分でもあります。
だからこそ、学生のうちから少しずつお金について知識を深めていくと、将来の生活設計やキャリア形成がよりスムーズになり、安心して臨床に取り組めると思います。
自分の働き方やライフプランについて、先輩の話をもっと聞いておけばよかった
臨床心理士として働くうえで、結婚や出産、介護などのライフイベントと向き合うこともあり得ます。
でも学生のころは、資格取得や就活など目の前のことで精一杯で、そこまで視野に入れて考えられませんでした。
そういった時期の仕事の選び方や保育園事情、働き方の悩みなど、実際に経験した先輩のリアルな話は、教科書や講義ではなかなか得られない貴重な情報です。
私自身も、学生のころにもっとこうした話を聞いて、将来の選択肢や準備のイメージを持っておきたかったなと感じています。
まとめ
学生時代は誰もが手探りで、資格取得や実習、目の前のことで精一杯だったと思います。私も当時は、この記事で紹介したようなことにあまり関心を持てていませんでした。
しかし臨床心理士として働き始めてから、「学生のうちにやっておけばよかった」と実感したことがたくさんあります。心理療法の幅広い学びや体験型研修、心理検査の理解、お金の知識、先輩たちのリアルな働き方の話など、現場に出てから「あの時知っていれば」と感じたポイントばかりです。
もちろん、すべてを完璧に準備する必要はありません。学生時代にできることには限りがありますし、働きながら学んでいけることも多いです。大切なのは、少しでも多くの選択肢や視点を持ち、将来の自分が安心して歩んでいける土台を作ることかなと感じています。
これから心理職を目指すあなたも、今の自分なりに精一杯取り組んでいるはずです。この記事がその歩みを少しでも支え、不安を和らげるきっかけになれば嬉しいです。完璧でなくて大丈夫。自分らしいペースで、一歩ずつ進んでいきましょう。
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