個別面接

心理士のための記録作成ガイド|実践の中で見つけた、記録が少し楽になる工夫

みなさんこんにちは。

カウンセリングや集団療法を担当するようになって、苦労することの一つが記録です。

「どのように書くか」
「どこまで何を記録するか」
「細かいことまで書きすぎて読み返すのが大変」
「時間がかかりすぎた」など、

さまざまな悩みがあるかと思います。

記録の書き方は職場の領域や記録の種類によって異なると思いますので、ここでは詳細なフォーマットやルールには触れませんが、私が実践の中で見つけた、記録が少し楽になる工夫についてお話ししたいと思います。

院生時代の「時間がかかりすぎた記録」の思い出

院生時代、先輩のカウンセリングに陪席させて頂いた日のことです。
面接後、先輩から記録は逐語記録を書くように求められました。

録音はできないので、頼れるのは先輩の言葉やクライエントの話した内容のメモだけ。
面接中のやり取りを、一言一句できるだけ正確に書き起こそうと努めました。

ところが、これがものすごく時間がかかりました。
「あの時クライエントは何ておっしゃったっけ?」
「先輩はどんな言葉を使った?」
何度もメモを見返しながら思い出し、書いては消し、繰り返すうちに数時間が過ぎてしまいました。

1時間程度の面接の逐語記録に、数時間かかってしまいました。

逐語記録は全てのケースで求められるわけではありませんが、
「細かく振り返りながら記録を残す作業は、これほど時間がかかるものなんだ」という体験は、今でも印象に残っています。


今、私が意識している5つの工夫

さて、そんな試行錯誤を経て、私が行った記録の工夫を5つ紹介します。
(ここでは相談機関や医療機関でのカウンセリング記録を想定しています。)


工夫1:ケースが終わったら、すぐに「残したい情報」から書く

特に、多職種への申し送り事項や「見立て」の欄は、とても大切な部分なので、頭が疲れているときに後回しにすると、うまく言葉がまとまらなかったり、書きにくく感じることがあります。
私はケースが終わるとすぐに、「見立て」、「申し送り事項」を最優先で書くことにしました。手書きのカルテの場合は難しいかもしれませんが、まずはメモでもいいので、「ここだけは絶対に残したい」という情報を先に押さえるのが大事だと思っています。

 そうすることで、その他の欄も自然と書き出しやすくなりました。私の場合は、この順番で書くようにしてからスムーズに進むようになりました。


工夫2:記録にかかる時間を測ってみる

最初の頃は記録に時間がかかるのは当たり前です。私も最初の頃は、1ケースに40分、50分かかることもざらでした。
でも、記録を書きながら「どのようにケースと向き合っているか」を整理することはとても大事ですし、何度も書くことで「記録のどこに時間がかかるのか」が見えてきます。
時間は無制限ではありません。だからこそ、自分の記録にどのくらい時間がかかっているか、実際に測ってみると、その後の見通しが立てやすくなります。


工夫3:記録を書く順番の工夫・自分に合った方法を見つける

例えば、SOAP形式で記録を書く場合、つい「S」から順番に書こうとしてしまいますが、私は「A(見立て)」から先に書くこともあります。
というのも、私にとって「A」は一番悩む部分で、ここが一番時間がかかるからです。頭が元気なうちに「A」を書き、残りは後で整える。
逆に「S」や「O」は書きやすく、スムーズに書ける方も多いと思います。自分がどの段階でつまずきやすいかを意識して、書く順番を工夫することで、記録作業がよりスムーズになりました。

工夫4:面接直後に“ひとことメモ”を残しておく

面接が続く日や、すぐに記録に取りかかれない時は、簡単にでも「ひとことメモ」を残すようにしています。

たとえば「印象に残ったやりとり」「大きな変化」「本人の表情や口調」などを1〜2行でメモするだけでも、あとで記録を書くときにとても助かります。

忙しい時ほど、こうしたメモが自分の記憶の手がかりになってくれると感じています

工夫5:定期的に記録を読み返す時間をつくる

日々の業務に追われていると、記録は「書いて終わり」になりがちですが、私は月に1回くらい、自分の記録を少しだけ振り返る時間をとっています。

印象に残ったケースを数件選び、見立てや方針の流れ、表現の癖などを見直すことで、自分の思考パターンに気づけたり、記録の質を少しずつ整えていける感覚があります。

また、自分の成長や変化にも気づける大切な時間です。

記録は「振り返りの時間」であり、見立てや方針を考えるための大事な時間

記録は単なる作業ではありません。
ケースを振り返りながら「今日のケースはどうだったか」「ケースをどう理解するか」「次回はどんな方針で臨むか」を整理するための大事な時間だと感じています。

もちろん、限られた時間の中で効率を意識することも大切ですが、記録を「ただの作業」にせず、ケースを深めるための時間として活用できたらと思っています。

これはあくまで私自身の経験による方法で、必ずしも正解とは限りません。

記録は、悩みながらも向き合い続けていく仕事の一部だと思います。

だからこそ、自分なりの工夫を積み重ねながら、「よりよく続けていける方法」を見つけていくことが、実はとても大切なのではないかと思っています


この記事が皆さんが自分に合った記録のスタイルを見つけるヒントになれば、とても嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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