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心理検査受検時の受検者は何を感じているか。それに対する心理士に求められる姿勢とは?

私たちは心理臨床コミュニティTicekt.を運営する臨床心理士・公認心理師です。

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心理検査を受けることは、受検された方がご自身の心の状態や特性をより深く理解するための大切な機会です。

初めて経験される方はもちろん、何度か経験されたことがある方も、検査に対して少なからず不安や緊張を感じることがあるかもしれません。

検査を受けられる方の心情は、検査の種類、目的、受検者の特性や性格、状況によって大きく異なります。しかし、いくつかの共通して抱きやすい感情や心理状態があります。

今回は、体験されやすい心情について紹介します。

心理士初学者のみなさんは、以下に示したような受検者の心情に対してご自身が心理士としてどのように配慮して、検査を実施するのか、改めて考える機会にしていただけますと幸いです。

まずは、受検者の方がよく体験しやすい心情について紹介していきます。

不安・緊張

未知への不安

心理検査がどのようなものか、何を聞かれるのか、どのような結果が出るのかといった未知の要素に対する不安を感じることがあります。特に初めて受ける場合は、緊張が高まりやすいでしょう。

評価されることへの不安

検査の結果によって自分の能力や性格、精神状態などが評価されるのではないかという恐れを感じることがあります。「悪い結果が出たらどうしよう」「変に思われたらどうしよう」といった心配が生じやすいです。

失敗への恐れ

知能検査や学力検査など、正答が求められる検査の場合、「うまくできなかったらどうしよう」という失敗への恐れを感じることがあります。

詮索されるのではという懸念

パーソナルな内容について質問されるのではないか、自分のことを根掘り葉掘り聞かれるのではないかと、少し警戒してしまうことがあります。

期待・関心

自己理解への期待

検査を通して自分の特性や能力、課題などを客観的に知りたいという期待感を持つことがあります。「自分がどんな人間なのか知りたい」「自分の強みや弱みを知りたい」といった気持ちです。

問題解決への期待

何らかの悩みや問題を抱えている場合、検査結果がその解決の糸口になるのではないかという期待を持つことがあります。「検査で自分の問題点が分かって、改善につながればいいな」と考えることがあります。

客観的な評価への関心

自分自身を客観的に評価してほしいという気持ちを持つことがあります。「周りの人は自分のことをどう思っているんだろう」「客観的なデータで自分を知りたい」といった関心です。

疑問・警戒心

検査の意義への疑問

なぜこのような検査を受ける必要があるのか、この検査で何がわかるのかといった疑問を持つことがあります。「この検査を受ける意味があるんだろうか」「本当に自分のことがわかるのかな」と考えることがあります。

検査者への警戒心

検査を行う心理士に対して、どのような人なのか、自分のことをどう判断するのかといった警戒心を持つことがあります。「この人に自分のことを話しても大丈夫だろうか」「偏見を持たれないだろうか」といった不安です。

結果の利用への懸念

検査結果がどのように利用されるのか、自分の意図しない形で利用されるのではないかといった懸念を持つことがあります。「検査結果が不利に扱われたらどうしよう」「秘密は守られるのだろうか」といった心配です。

疲労・負担感

時間的負担

心理検査は時間がかかることがあり、集中力を持続させる必要があるため、疲労を感じることがあります。特に長時間にわたる検査や、複数の検査を受ける場合は負担感が大きくなります。

精神的負担

質問に答えたり、課題に取り組んだりする中で、精神的なエネルギーを消耗することがあります。特に、過去の辛い経験や感情について問われる場合は、精神的な負担が大きくなります。

その他の感情

退屈感

一部の検査では、単調な作業が続くことがあり、退屈を感じることがあります。

挑戦意欲

知能検査や能力検査など、自分の力を試すような検査に対して、挑戦意欲を持つことがあります。「どこまでできるか試してみたい」「良い結果を出したい」といった気持ちです。

安心感

検査を受けることで、専門家に見てもらえるという安心感を得られることがあります。「これで自分の状態が客観的にわかるんだ」という安心感です。

 

心理士として大切にしたいこと

上記に示したように、心理検査を受検される方は、色んな心情を抱えながら検査に臨んでくださっています。心理士は、そのことをよく理解し、以下のような点に配慮して検査に携われたら良いのではないでしょうか。

丁寧な説明

検査の目的や内容、結果の利用方法などを丁寧に説明し、受検者の不安や疑問を解消するように努めます。検査導入時に、目的等ご理解いただけたか、<疑問や質問等はないですか?>と確認しておくのも良いでしょう。

安心できる雰囲気づくり

受検者がリラックスして検査に臨めるような、温かく受容的な雰囲気を作るように心がけます。急に教示を読み始めたりせず、自己紹介や来訪時の天気の話等、アイスブレイクの会話をするのも良いでしょう。

受容的な態度

受検者の言動や感情を批判的に捉えることなく、ありのままを受け止める姿勢を示します。

プライバシーへの配慮

受検者のプライバシーに配慮し、得られた情報は適切に管理することを伝えます。

結果のフィードバック

検査後には、結果を分かりやすく説明し、受検者の自己理解を深めるサポートを行います。

受検される方々の心情を理解し、適切な配慮を行うことは、より正確で意味のある検査結果を得るためにも、受検される方々との信頼関係を築くためにも不可欠です。

心理士初学者の皆さんと受検される方々、双方にとって、この記事が受検時の安心の種となりましたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

別の記事で、心理検査の時に心理士が何をどう見ているのか、についてもまとめています。あわせてご覧ください。→こちら