先日、第8回公認心理師試験の合格発表がありました。
今回の試験は「難しかった」という声が多く聞かれましたが、実際のところはどうだったのでしょうか。

この記事では、公認心理師として働く筆者が、自ら問題を解き、その感想と詳細な分析をお届けします。
合格率からみる試験の難易度
一般財団法人 公認心理師試験研修センター
一般財団法人 公認心理師試験研修センターの発表によると、第8回公認心理師試験の合格率は66.9%でした(Aルートは77.2%)。
試験が終わった直後から、ネット上では「難しかった」という声が多く見られましたが、過去の合格率と比較してみましょう。
合格率を見ても、本当に難しかったのだろうと推察できます。
過去の合格率は以下の通りです。
- 第1回(9月9日実施分):79.6%
- 第1回(12月16日実施分):64.5%
- 第2回:46.4%
- 第3回:53.4%
- 第4回:58.6%
- 第5回:48.3%(Aルート 100%)
- 第6回:73.8%(Aルート 94.9%)
- 第7回:76.2%(Aルート 90.1%)
- 第8回:66.9%(Aルート 77.2%)
過去の合格率を見ると、第8回の合格率は決して低い部類ではありませんが、ここ数年と比較するとやや下降傾向にあることがわかります。
特に、前回の第7回(76.2%)と比較すると、約10ポイント近くも合格率が下がっていることから、「難しかった」という受験者の体感は正しかったと言えるでしょう。
ちなみに公認心理師として活動する筆者は、自身の知識維持と職務への自戒を込めて、毎回公開される公認心理師試験問題を解くようにしています。
これまでのところ、毎年合格ラインをクリアできていますが、今回の第8回も例に漏れず問題を解いてみました。

第8回試験を解いてみての感想
実際に第8回公認心理師試験問題を解いてみた率直な感想は、「確かに難しかった」です。
具体的に難しさを感じた点としては、法律や制度に関する問題の多さが挙げられます。
また、これまであまり目にしなかったような専門用語が出題されており、問題を進める中で初めて知る用語も少なくありませんでした。
結果として、今回も無事に合格ラインをクリアすることができましたが、筆者自身の過去最低点を記録しました。
この結果から、改めて基礎知識の復習に力を入れる必要性を強く感じています。
ブループリントと実際比率の乖離
問題を解き終えてふと疑問に思ったのが、「毎年公開されるブループリントは、本当にその比率通りに出題されているのだろうか?」という点でした。
筆者の体感としては、毎年法律関係の問題が多いように感じていたため、これを機に全154問について、ブループリントのカテゴリ別に実際の出題数を数えてみました。
その結果が以下の表です。
大カテゴリ | ブループリント | 実際の比率 |
①公認心理師としての職責の自覚 | 約6% | 1.3 |
②問題解決能力と生涯学習 | 1.3 | |
③多職種連携・地域連携 | 0 | |
④心理学・臨床心理学の全体像 | 3 | 1.9 |
⑤心理学における研究 | 2 | 4.5 |
⑥心理学に関する実験 | 2 | 0.6 |
⑦知覚及び認知 | 2 | 3.2 |
⑧学習及び言語 | 2 | 2.6 |
⑨感情及び人格 | 2 | 3.2 |
⑩脳・神経の働き | 2 | 4.5 |
⑪社会及び集団に関する心理学 | 2 | 3.9 |
⑫発達 | 2 | 6.5 |
⑬障碍者(児)の心理学 | 5 | 6.5 |
⑭心理状態の観察及び結果の分析 | 3 | 6.5 |
⑮心理に関する支援(相談、助言、指導、その他の援助) | 8 | 6.5 |
⑯健康・医療に関する心理学 | 9 | 3.9 |
⑰福祉に関する心理学 | 9 | 9.1 |
⑱教育に関する心理学 | 9 | 2.6 |
⑲司法・犯罪に関する心理学 | 5 | 2.6 |
⑳産業・組織に関する心理学 | 5 | 1.3 |
㉑人体の構造と機能及び疾病 | 4 | 5.2 |
㉒精神疾患とその治療 | 5 | 9.7 |
㉓公認心理師に関する制度 | 6 | 12.3 |
㉔その他(心の健康教育に関する事項等) | 2 | 0 |
※ブループリントの比率は公表されている概算値であり、実際の出題数から算出した比率とは誤差が生じることがあります。
この集計結果を見ると、ブループリントと実際の出題比率には大きな乖離があることが明らかになりました。
特に「公認心理師に関する制度」のカテゴリは、ブループリントでは約6%とされているにもかかわらず、実際には12.3%と倍以上の出題比率でした。
これは、今回の試験で筆者が「法律や制度に関する問題が多い」と感じた体感と一致しています。
この分析を通して、過去問をブループリントのカテゴリ別に分類し、それぞれの正答率を出すことで、自身の苦手分野をより明確に把握できるのではないかと考えています。
現在、そのための換算表を作成中です。
完成しましたら、どこかで公開する予定ですので、ぜひご活用いただければ幸いです。
今後の学習に向けて
今回の第8回公認心理師試験は、全体的に難易度が高く、特に法律や制度に関する知識が問われる傾向が強かったと言えるでしょう。
これから公認心理師を目指す方、あるいは次回以降の試験を考えている方は、ブループリントを参考にしつつも、過去問演習を通じて実際の出題傾向を掴むこと、そして自身の苦手分野を徹底的に克服することが重要になります。
公認心理師としての専門性を高めるためにも、継続的な学習と自己研鑽を続けていかねばならないなと思っています。